こども家庭庁が「5歳児健診」普及へ費用補助 ~早期介入と早期療育の必要性
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先日、「こども家庭庁が来年度より5歳児健診の費用補助をする」「2028年度までに実施率100%を目指す」というニュースが取り上げられました。
早期に障害がある子どもを支援するため、健診に必要な医師らを確保する費用や研修費を自治体に補助し、実施率を2028年までに100%を目指すというものです。
また、自治体には障害があると判明した場合、子どもが在籍する保育所などで個別の支援計画を作るように要請し、入学先の小学校にも伝えるように求めるということです。
では、5歳児健診の実施は、どのような意味を持つのでしょうか。
乳幼児健診とは?
乳幼児の疾患や発達障害などの可能性を見極め、早期の支援につなげる目的で行われている乳幼児健診です。
現在は、母子保護法により、1歳半健診と3歳児健診が自治体に義務付けられていますが、その後の健診は任意のため、実施されている自治体は15%です。(令和3年 乳幼児健康診査の実施状況より)
3歳児健診のあと、小学校に入る前の「就学時健診」が行われるまでは約3年の空白期間があるため、「就学時健診」で指摘されるケースや、小学校に入学してから気づかれるケースもあります。
5歳児健診により、特別な配慮が必要なお子さんに対して、早期介入を実施することで、保護者の課題への気づきや生活への適応が向上する可能性が指摘されています。
また、5歳児健診により学童期の不登校発生数が減少したという研究結果もあり、5歳児健診の普及に期待が寄せられます。
早期介入と早期療育の必要性
乳幼児期の脳は急速に発達し、およそ4~5歳までに成人の約80%、6歳で90%、12歳でほぼ100%まで発達します。
5~6歳までの時期は、脳をはじめとしたいろいろな神経回路が作られる時期のため、神経回路に適切な刺激を与えて、脳をしっかり育てることが大切で、早期療育も有効なものの一つです。
乳幼児期に、発達がゆっくりなお子さんに対しては、「児童発達支援」のサービスがあり、年少~年長の時期には無料で利用できるので、お子さんに合った療育支援を受けるのもよいでしょう。
(※児童発達支援のサービスを受けるためには、「受給者証」が必要です。大阪市の受給者証の取り方はこちら→)
また、小学校に入学すると、身辺自立や学習姿勢、自主的な行動、集団活動への適応など、幼稚園や保育園の時に比べて、身につけておきたい力や求められる力が多くなります。
保育園や幼稚園の頃は、お子さんのことで「少し気になるけど大丈夫だろう」と思っていることも、小学校の学習スピードはどんどん速くなり、学ぶことも増えるので、支援が必要なお子さんにとっては、周りの友達や学校の勉強についていくことがしんどくなり、不登校などに結びつく可能性もあります。
早期にお子さんのペースに合わせた支援を受けることで、お子さんのペースで力を伸ばし、学校で過ごしやすくなります。
そのためにも、小学校に入学前の「5歳児健診」で、支援が必要なお子さんに対し早期介入できることは望ましいと思われます。
5歳児健診の問診内容
5歳児健診の問診内容の例には以下のようなものがあります。
精神・神経発達(理解)について
・しりとりができますか
・じゃんけんの勝ち負けがわかりますか
・言葉で自分の要求や気持ちを表し、会話をすることがうまくできますか
情動行動について
・カッとなったり、かんしゃくをおこしたりすることがよくありますか
・順番を待つことが出来ますか
・集団生活では、友達と一緒に遊んだり、行動することができますか
・友達と協力しあう遊びができますか
・自分からすすんでよく他人を手伝いますか
5歳頃には、ルールが理解できるようになり、順番を待つことや交代をしながら遊べるようになります。また、遊びも友達との集団遊びを楽しめるようになり、自分の要求を伝えるなど、言葉でのコミュニケーションも増えます。
3歳頃に比べ、社会性や理解力、コミュニケーションなどがぐっと広がります。
支援学級、通級指導教室の児童数の増加と、学校の支援体制
障害を持つ児童の数は年々増えている状況で、大阪府だけでも小中学校の支援学級在籍者数は2022年度時点で、20年前より約5.7倍になっており、通級指導教室数においては20年前より約7.9倍にもなっています。(大阪の支援教育 令和4年度版より)
就学時健診や小学校に入ってから「発達障害」が気づかれた場合、すぐに学校が支援体制を整えられるというわけではありません。
秋ごろに実施される「就学時健診」より前、春頃から「就学相談」が行われており、そこで学校見学や、支援級か普通級かなど学校と相談する機会を設けられているため、就学時健診後では、支援体制に十分な時間をとることが難しい場合もあります。
支援学級に属するお子さんの数により先生の人数も変動することもあるため、支援が必要かどうか迷っている場合でも、就学相談を受けている方がよいでしょう。
そのためにも、就学相談前の空白の期間に行う「5歳児健診」は有効であると思われます。
5歳児健診実施に向けて
5歳児健診の実施に合わせて、地域のリソースを使った支援体制を構築し、地域でフォローアップする体制を作るという案が出ています。
現在実施されている1歳半健診や3歳児健診でも、自治体により健診体制やフォローがしっかりしているところもあれば、健診医の確保が困難なところもあり、地域差があることも課題となっています。
また、医療だけでなく、児童発達支援などの福祉機関や、幼稚園や学校などの教育機関との連携もどのように進めていくのかも課題として挙がっています。
28年度の実施率100%に向けてまだまだ課題はありますが、早期介入や早期療育により、支援学級在籍の子どもの増加や不登校の子どもの増加に歯止めがかかることが期待されます。
参考:
読売新聞オンライン
第2回こども家庭審議会成育医療等分科会 令和5年11月22日 資料2
第4回こども家庭審議会成育医療等分科会 令和6年11月20日 資料2ー2
大阪の支援教育 令和4年度版
脳と心の発達メカニズム~五感の刺激の大切さ~
5歳児健診マニュアル
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