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ADHD治療薬の効果が目に見えるように

2014.10.08
  • 発達障害
  • ADHD(注意欠如多動性障害)
  • 発達障害の療法

先日、自治医科大学の先生がADHD(注意欠如多動性障害・注意欠如多動症)の治療薬の効果の可視化に成功したというニュースがあったので紹介しようと思います。

まず発達障害の一つにADHD(注意欠如多動性障害・注意欠如多動症)というものがあります。
代表的な症状としては

    • 不注意-集中力が続かない
    • 多動性-じっとできない、落ち着きがない
    • 衝動性-思いつきで行動してしまう

の以上3つがあります。

現在ではADHDの診断、また薬の治療効果の検討は行動観察が中心となっており、客観的評価方法の開発が望まれていました。

そして今回、自治医科大学の門田先生、山形先生、中央大学の檀先生らの研究で

ADHDの治療薬について「薬の効き方」を可視化することに成功

しました。

つまりADHDの治療薬の効果を客観的に見ることができるという大きな発見です。

研究内容としては、6歳から14歳のADHDの子ども約50名に、ADHDの薬(塩酸メチルフェニデート徐放薬もしくはアトモキセチン)を服用してもらいました。
さらに、別の日にプラセボ薬(薬効成分のない薬)を服用してもらいました。
服用前後にテストをしてもらいその時の脳の活動を、約6分間光トポグラフィによって計測しました。
(※光トポグラフィ:頭に近赤外線を当てて、反射してくる光を基もとにに脳血流量の変化を読み取り、脳の活動状態を数値化する装置のこと)

具体的なテスト内容としては
抑制機能を測るための「行動抑制ゲーム」と注意機能を測るための「注意ゲーム」と呼ばれるテストです。

行動抑制ゲーム

パソコンを使いゾウの絵が出てきたらボタンを押し、トラの絵が出てきたらボタンを押さないという課題であり、抑制機能を評価することができる。

注意ゲーム

パソコンを使いゾウの絵が出てきたら赤のボタンを押し、トラの絵が出てきたら青のボタンを押すという課題であり、注意機能を評価することができる。

(出典:「Monden’s Lab at Jichi Medical University」(http://ped-brain-lab.xii.jp/wp/?p=138))

また比較対照として、同様の課題をADHDではない子ども約50名にも行いました。

さてこの実験の結果はというと
ADHDでない子どもの場合、行動抑制ゲーム中には右前頭前野、注意ゲーム中には右前頭前野と右頭頂葉の活動が見られました。

(※前頭前野:脳の中でワーキングメモリー、反応抑制、行動の切り替え、プラニング、推論などの認知・実行機能を担っている部分。)
(※頭頂葉:人間の感覚に関わる機能を担っている部分)

一方、ADHD児の場合、ADHDの薬の服薬前とプラセボ薬(薬効成分のない薬)の服薬時は脳の活動は見られませんでした。
しかし、一方、塩酸メチルフェニデート徐放薬服用後は、注意、行動抑制ゲーム中のどちらでも、右前頭前野の活動が強めに回復しました。アトモキセチンを服用後は、行動抑制ゲーム中には右前頭前野、注意ゲーム中には右前頭前野と右頭頂葉の活動が弱めに回復しました。

ADHD

以上のように、ADHDの子どもへの薬物治療の効果が光トポグラフィで可視化できることが分りました。
今後、この研究を発展させ、光トポグラフィで脳活動を参考にしながら、ADHDの症状や薬の効き方に応じて薬物治療の効果を確認する治療方が開発されたらと思います。

[参考文献]
・「Monden’s Lab at Jichi Medical University」
・「脳科学辞典」
・「日立製作所」

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