子どもの感覚過敏とは?チェックリストと発達障害との関係
- 発達障害
- ASD(自閉症スペクトラム)
- ADHD(注意欠如多動性障害)
- LD(学習障害)
- 支援方法・家庭での過ごし方
五感から得られる情報に対して過剰に反応してしまうこと、それが「感覚過敏」です。
感覚過敏にはさまざまな症状があり、日常生活に大きな支障をきたす場合は、発達障害や他の疾患が原因である可能性があります。
このコラムでは、感覚過敏の種類、チェックリスト、原因、対処法、問題点などを詳しく解説します。
子どもの感覚過敏が気になる方は、ぜひ参考にしてください。
感覚過敏とは?子どもの感覚過敏のチェックリスト
感覚過敏は、五感(視覚、聴覚、触覚、味覚、嗅覚)のいずれかに対して過剰に反応する状態を言います。
どれか一つの感覚に過敏な場合もあれば、複数の感覚に対して過敏に反応する場合もあります。
発達障害の診断基準の一部ではありませんが、発達障害のある子どもには、感覚過敏を併発することが多く見られます。
感覚過敏の症状は個々の子どもにより異なるため、子どもが何を不快に感じ、困っているのか理解を深めていくことが大切です。
次に、感覚過敏の種類や特徴について詳しく見ていきます。
感覚過敏の種類とは?
人間の五感(視覚、聴覚、触覚、味覚、嗅覚)の敏感さは人それぞれ異なります。
感覚過敏であっても、日常生活に支障がなければ問題はありません。
しかし、感覚過敏により不快感が強く、日常生活に影響を及ぼしている時は対応が必要です。
感覚過敏には、次のようなものがあります。
• 視覚過敏: 明るい光、強い色彩などに敏感に反応する状態
• 聴覚過敏: 大きな音や特定の音に過敏に反応する状態
• 触覚過敏: 特定の質感に触れることに過敏に反応する状態
• 味覚過敏: 特定の味に過敏に反応する状態
• 嗅覚過敏: 特定の匂いに過敏に反応する状態
次の項目でそれぞれについて詳しく見ていきます。
嗅覚過敏の例や特徴
嗅覚過敏とは、周囲の匂いに敏感に反応してしまう症状のことです。
日常生活において様々な場面で不快やストレスを感じることがあります。
嗅覚過敏の例としては、次のようなものがあります。
・柔軟剤や洗剤の匂いが不快に感じる
・料理の匂いが強く感じて吐き気がする
・排気ガスやタバコの煙に敏感に反応する
・体臭が気になる
・特定の匂いに強い嫌悪感を持つ
嗅覚過敏の特徴としては、匂いに敏感に反応し不快やストレスを感じる、匂いの強さや種類によって反応が異なる、匂いが原因で頭痛や吐き気などの身体症状が現れる、匂いを避けるために外出を控えるなどが挙げられます。
嗅覚過敏は、感覚過敏の中でも比較的珍しい症状のため、本人も周りもわかりにくいかもしれません。
しかし、子どもが嗅覚過敏の場合、匂いにより体調不良をきたしたり、匂いの強い場所を避けたりするなど、日常生活に大きな影響を与えている可能性があります。
聴覚過敏の例や特徴
聴覚過敏とは、日常生活における音が通常よりも大きく聞こえたり、不快に感じたりすることを言います。
さまざまな音が不快に感じられる場合もあれば、特定の音に対してのみ過敏に反応する場合もあります。
聴覚過敏の例としては、以下のものなどが挙げられます。
・日常生活の音: 掃除機の音、ドライヤーの音などの機械音、食器のぶつかる音、車のクラクション、人の話し声、赤ちゃんの泣き声、音楽など
・特定の音: 高音、金属音が擦れる音、紙を破る音、咀嚼音など
子どもの場合、トイレの水が流れる音や、タオルドライヤーの大きな音が嫌で、トイレに行くことができないケースもあります。
子どもがある特定の場面や、ある音に対し、頻繁に耳をふさぐ、急にパニックになるなどの様子が見られた時、聴覚過敏が影響しているかもしれません。
聴覚過敏は、発達障害や脳の機能障害が原因となっている場合もあれば、ストレスや疲労が原因となっている場合もあります。
視覚過敏の例や特徴
視覚過敏は、光や色などに対する感覚の過敏性のことを言います。
視覚過敏は例えば、次のようなものがあります。
・人工照明や太陽光がまぶしく感じる
・特定の色の光に不快感がある
・強いコントラストのあるパターンを見ることが難しい
・映画やテレビの画面を見るのが難しい
・人混みの中で視覚的に圧倒される
視覚過敏は、見ようと思っていてもまぶしさなどに不快感を感じ、見ることができなかったり、気分が悪くなったり、疲れやすくなったりするなど、日常生活に支障をきたすことがあります。
視覚過敏ではなく、視力や見え方の問題がある場合もあるため、 子どもの見え方に違和感を感じた時は、早めに眼科医に相談しましょう。
触覚過敏の例や特徴
触覚過敏とは、特定の質感のものに触れることへの過剰な反応を示す状態です。
触覚過敏の例としては以下のようなものがあります。
・衣服のタグ、縫い目、または特定の布地を不快に感じる
・髪の毛など体に触れられることを嫌がる
・歯磨きを嫌がる
・水遊びや泥遊びを嫌がる
・クレヨンや絵の具など、手が汚れるものを使うことを嫌がる
触覚が過敏な子どもは、触覚刺激を避けるために、特定の活動を拒否することや、特定の場所に近づくことを嫌がることがあります。
そのため、触覚過敏により、子どもの発達や日常生活に影響を与える可能性があることが問題となります。
味覚過敏の例や特徴
味覚過敏とは、特定の食品や味に対する過敏な反応のことです。
味覚過敏を持つ人は、他の人が普通だと思う味を不快に感じたり、吐き気を催したりすることがあります。
味覚過敏の例としては、以下のようなものがあります。
・食物のわずかな苦味や酸味に敏感であること。
・食物の食感に敏感であること。
・特定の食品の強い味を不快に感じる。
・特定の食品の味を強く感じる。
味覚過敏は発達障害のある人によく見られ、自閉スペクトラム症(ASD)や注意欠陥・多動性障害(ADHD)のある人は、味覚過敏を持つ可能性が4倍高いとされています。
味覚過敏は発達障害の可能性はありますが、必ずしも発達障害があることを意味するわけではありません。
子どもの場合、好き嫌いや食わず嫌いと区別がつきにくいですが、味覚過敏は、生活の質や栄養面に大きな影響を与える可能性があるので、注意しましょう。
子どもの感覚過敏のチェックポイント
子どもの感覚過敏は、年齢が低いほど、子ども自身が不快なことや困っていることがわからなかったり、大人に伝えられなかったりすることがあり、周りが気づくことが遅れることがあります。
感覚過敏は、発達障害やその他の健康状態と関連していることがあるので注意が必要です。
次のチェックに当てはまる様子が見られないかどうか、子どもの様子をよく観察しましょう。
嗅覚過敏のチェックポイント
匂いは目に見えず、人によって感じ方も違うため、嗅覚過敏は周りの人にわかりにくく、理解されにくいところがあります。
しかし、嗅覚過敏を持っていると、様々な場所で不快感があり、日常生活に支障を引き起こす可能性があります。
以下のチェックポイントを参考に、嗅覚過敏があるかどうか、子どもの様子を見ながら、確認してみましょう。
• 匂いに過剰に反応する
• 特定の匂いに不快感や吐き気を催す
• 匂いに敏感すぎて、集中力や睡眠が妨げられる
• 匂いを避けるために、外出を控えるなど生活に支障が出ている
嗅覚過敏の子どもにとって、一般的にいい匂いと言われる匂いでも不快に感じることがあったり、気持ち悪そうにしたりしているかもしれません。
言葉で表現できない子どもの時は、いつもと変わった様子がどんな場所や場面(例えば、車の中、店の前など)で見られるか、見ておくとよいでしょう。
聴覚過敏のチェックポイント
子どもは大きな音に敏感に反応したり、耳を覆ったりすることがありますか? または、特定の音や声に不快感を示すことがありますか?
これらは聴覚過敏のサインかもしれません。
音が通常よりも大きく聞こえる、または不快に聞こえています。
そのため、聴覚過敏の子どもは、以下のような反応を示すことがあります。
• 大きな音に過剰に反応する
• 特定の音や声に不快感を示す
• 静かな場所を好む
• 耳を覆ったり、手で顔を覆う
• 音に対して強い不安や恐怖を示す
聴覚過敏は、子どもの発達、コミュニケーションや社会的交流、学習に影響を与える可能性があります。
子どもの不快な音や場面の特徴を知り、適切な対応をしていくことで、子どもの不快感を和らげることができます。
視覚過敏のチェックポイント
視覚過敏の子どもは、強い光や特定の色に過敏になりがちです。 蛍光灯やLED照明、鮮やかな色、光沢のある表面は、不快感や痛みを引き起こすことがあります。 また、混雑した場所や動きの速い視覚刺激に圧倒されることもあります。
次のような様子に注意してみるとよいでしょう。
• 強い光や特定の色を避ける
• 蛍光灯やLED照明を不快に感じる
• 混雑した場所や動きの速い視覚刺激に圧倒される
• 絵本やテレビを見るのが難しい
• 目を頻繁にこする
• 頭痛や吐き気を訴える
視覚過敏は、発達障害の症状として現れることもありますが、必ずしも発達障害とは限りません。
視覚過敏の子どもは、刺激の多い場所で疲れやすいことがあるので、早めに対処をすることが望ましいです。
触覚過敏のチェックポイント
子どもが触覚過敏かどうか、気になることはありませんか? 触覚過敏は、感覚過敏の中でも比較的よく見られる症状です。
触覚過敏があると、周りの人にとってはわずかな刺激でも、不快に感じることがあります。
以下の項目に当てはまることが多いようであれば、触覚過敏の可能性があります。
• 服のタグや縫い目、靴下の縫い目などが気になって、すぐに取ってしまおうとする
• 髪の毛や顔に触れられるのを嫌がる
• 人混みや狭い場所が苦手で、触れられるのを避ける
• 柔らかい素材の服を好む
• 水や砂などの感触を嫌がる
• 歯磨きや爪切りなどの際に、不快感や痛みを強く感じる
これらの項目はあくまでも一例であり、子どもによっては当てはまらないものもあるかもしれません。
まずは、触覚過敏の子どもが、どのような素材のものや感触のものに触れると嫌がるのか、それを観察し、苦手な感覚について理解していきましょう。
味覚過敏のチェックポイント
味覚過敏とは、味覚が通常より敏感になっている状態のことです。
刺激となる味覚は人によって異なり、苦味、酸味や、化学調味料など様々です。
味覚過敏の子どもは、これらの味を強く感じたり、わずかな量でも不快に感じたりすることがあります。
味覚過敏のチェックポイントは次のとおりです。
• 特定の味を強く感じる
• わずかな量の味でも不快に感じる
• 食べ物の味を長く感じる
• 特定の食べ物の匂いで吐き気がする
• 食事時間が短くなる
• 偏食がひどい
上記のような症状が複数当てはまる場合は、味覚過敏の可能性があります。
どのような味覚のものが苦手なのか、入っている食材などは何かなど、見ていくとよいでしょう。
感覚過敏の原因について
感覚過敏は、日常生活の中で様々な刺激を過剰に感じてしまう状態です。その原因は、大きく分けて以下のようなものがあります。
・脳機能による感覚過敏
・疾患による感覚過敏
・ストレスや疲労などが引き起こす感覚過敏
これらの原因は、複合的に絡み合っている場合が多く、一概には特定できないことも多いです。
それぞれの原因について、次に詳しく見ていきます。
脳機能による感覚過敏の理由
感覚過敏には様々な原因がありますが、ここでは脳機能に関連する要因について説明します。
脳は、感覚器官から得られた情報を処理し、統合して認識します。
感覚過敏の場合、この情報処理過程に異常が生じ、過剰な刺激として認識されてしまうと考えられます。
感覚過敏の人は、「感覚閾値」という、「刺激を認識できる最低限の強さ」が通常よりも低いため、より弱い刺激でも強く感じてしまう傾向があります。
脳内では、様々な神経伝達物質が情報伝達に関与しています。
感覚過敏と関連する神経伝達物質としては、セロトニンやノルアドレナリンなどが挙げられ、これらの神経伝達物質のバランスが崩れることで、感覚過敏を引き起こす可能性があると言われています。
疾患による感覚過敏
感覚過敏を引き起こす原因は様々ですが、身体的な疾患も要因の一つとして挙げられます。代表的なものには以下のようなものが挙げられます。
• 内耳障害
• 視力障害
• 発達障害
• 薬の副作用
コロナウィルスに感染後、味覚障害が起きたケースが多く聞かれましたが、身体的な疾患が原因の感覚過敏の場合、その疾患の治療を行うことがまず第一です。
内耳障害や視力障害などの場合は、専門医による診察と適切な治療が必要です。
発達障害の場合、子どもの感覚過敏への対処法や支援方法などを、個々に合わせて行っていくことが大切になります。
また、薬の副作用による感覚過敏の場合は、医師に相談し、必要に応じて薬の変更を検討する必要があります。
ストレスや疲労などが引き起こす感覚過敏
精神的なストレスや睡眠不足や疲労は、感覚過敏を引き起こす原因となり得ます。ストレスにより、睡眠不足になったり、疲労がたまったり、脳が十分に休息をとれていない状態になると、感覚処理能力が低下します。そのため、普段なら気にならない程度の刺激でも、過敏に感じやすくなるのです。
ストレスや、睡眠不足、疲労が原因で起こる感覚過敏には、以下のような特徴があります。
・人混みや騒音が苦手になる
・普段よりも音や光に敏感になる
・匂いや味が強く感じる
・触覚に不快感を感じやすくなる
・集中力や思考力が低下する
ストレスや、睡眠不足、疲労が原因で起こる感覚過敏は、一時的なものの場合が多いです。十分な睡眠をとったり、休息をとることで症状は改善されます。しかし、症状が長期化したり、日常生活に支障をきたす場合は、医療機関を受診した方が良いでしょう。
感覚過敏への対処法と治療法
感覚過敏は、日常生活の音や感触、味、匂い、光などの感覚入力が、通常よりも強く感じられるため、不快感や不安、ストレスを引き起こします。
次に、子どもの感覚過敏に対して、いくつかの対処法と治療法を見ていきます。
病院を受診する方法
まず、かかりつけ医や小児科を受診し、感覚過敏が原因となる他の病気や障害がないか確認してもらいましょう。
医師は、問診や診察を通して、子どもの感覚過敏の状態を把握し、適切な対処法や治療方針を提案してくれます。
病院を受診する際には、以下の情報を準備しておくとスムーズに進みます。
• 症状: 感覚過敏の症状を具体的にメモしておきましょう。例えば、どのような刺激に対して過敏なのか、いつから症状が始まったのか、どのような場面で症状が強くなるのかなどを記録しておきましょう。
• 経過: 症状の経過をメモしておきましょう。いつ頃から症状が始まったのか、どのような経過を辿っているのか、他の症状との関連性などがあれば記録しておくとよいでしょう。
• 生活習慣: 生活習慣についてもメモしておきましょう。例えば、睡眠時間、食事内容、運動習慣、ストレス状況などがあれば記録しておきましょう。
• 家族歴: 家族歴もメモしておきましょう。家族に感覚過敏や発達障害の方がいる場合は、その情報を伝えておくとよいでしょう。
病院を受診する際には、これらの情報を医師に伝え、適切な診断や治療を受けるようにするとよいでしょう。
イライラなどの気持ちへの対処法
感覚過敏の子どもは、強い刺激に敏感に反応して、イライラや不安を感じることがあります。このような気持ちに対処するためには、いくつかの方法があります。
・深呼吸など、リラックスできる方法を教える
・好きな音楽や香り、ぬいぐるみなど、落ち着くアイテムを近くに置く
・運動や遊びを通して、体を動かす
・言葉で気持ちを伝える練習をする
子どもによって落ち着く方法は人それぞれです。
子どもがイライラした時や不安になった時、落ち着く方法や落ち着くものを見つけておくと、その場面に対処しやすくなります。
周囲への理解を求める
感覚過敏は他の人には見えにくく、つらさやしんどさを理解してもらいにくく、子どもが一人でつらい思いをしていることがあります。
そのため、家族や学校、保育施設など、周りの人たちに子どもの感覚過敏について説明し、理解を求めることが大切です。
例えば、感覚刺激を遮断するために例えばイヤーマフなど必要な道具の使用や、教室で刺激を受けにくい席の場所にしてもらうなどをお願いすることが挙げられます。
周囲の理解を得て、協力してもらうことにより、子どもが過ごしやすくなります。
子どもの感覚過敏による問題
感覚過敏は、発達障害の一つである自閉スペクトラム症(ASD)や注意欠陥多動性障害(ADHD)の子どもによく見られることがあります。
感覚過敏の程度や原因は異なるため、軽度で日常生活に支障がない場合は問題ありません。
しかし、疲れやすさや不快感が強く、日常生活に支障をきたす場合、適切な対応が必要です。
それぞれの感覚過敏の問題について、次に挙げていきます。
嗅覚過敏がもたらす問題
嗅覚過敏は、日常生活にさまざまな問題をもたらす可能性があります。具体的には以下のような問題が挙げられます。
・不快な匂いに耐えられない: 日常的に接する可能性のある柔軟剤や芳香剤、タバコの匂い、料理の匂いなど、多くの人が不快に感じない程度のでも、不快に感じたり、気分が悪くなったりすることがあります。
・外出が困難になる: 人混みや飲食店など、さまざまな匂いが混在している場所に行くことが難しくなる場合があります。
・食生活に制限が出る: 特定の食材の匂いに敏感な場合、食事の選択肢が狭まってしまうことがあります。
・日常生活に支障が出る: 匂いが原因で集中力が低下したり、イライラしたり、睡眠に影響が出たりすることがあります。
・人間関係に影響が出る: 匂いに敏感なことを理解してもらえなかったり、気遣ってもらえなかったりすることで、人間関係に影響が出ることもあります。
嗅覚過敏は、日常生活の質を低下させるだけでなく、精神的な負担にもつながる可能性があります。
日常生活では、洗剤など身の回りで使用するものを無香料に変えたり、外でマスクをしたりするだけでも、少し不快感を減らすことができるかもしれません。
もし、嗅覚過敏が日常生活に支障をきたしている場合は、医師や専門家に相談しましょう。
聴覚過敏がもたらす問題
聴覚過敏は、音に過敏に反応し、不快感や苦痛を伴う感覚障害です。日常生活における様々な場面で支障をきたすことがあり、特に以下のような問題を引き起こす可能性があります。
・日常生活に困難さ: 大きな音が出る場所や騒がしい環境では、日常生活を送るのが難しくなります。例えば、電車やバスに乗る、人の多いレストランで食事をする、映画館やコンサートに行くことなどが困難になることがあります。
・コミュニケーションの困難さ: 人の声の取捨選択が難しく、聞こえる情報量が多くなり、情報処理が追いつかなくなると、複数人数での会話やコミュニケーションが苦手になることがあります。
・勉強や行事などの困難さ:他の音に気を取られて、作業や勉強に集中することが難しくなることがあります。また、大きな音が出る場面がある行事などの参加が難しくなることがあります。
・精神的な問題: 音に過敏になるために、ストレスや不安を感じやすくなったり、イライラしたりすることがあります。また、不眠や食欲不振などの症状が現れることもあります。
聴覚過敏は、生活の質を大きく低下させる可能性があります。
騒がしい場所ではイヤーマフやヘッドフォンをつけて音を遮断する、人の多い時間は避ける、環境を整備するなど、その時々に応じた工夫が必要になります。
視覚過敏がもたらす問題
視覚過敏は、日常生活において様々な問題を引き起こす可能性があります。
視覚過敏がもたらす問題の例は、次にいくつか挙げます。
・光や色彩への過剰な反応: 明るい光や特定の色彩に敏感に反応し、不快感や痛みを伴う場合があります。そのため、屋外活動や蛍光灯の強い照明下では、専用の眼鏡や帽子を着用するなどの工夫が必要になることがあります。
・ 視覚的情報の処理の遅延: 視覚情報を処理する速度が遅いため、周囲の状況や変化を把握するのに時間がかかることがあります。そのため、交通量の多い場所や人混みでは、注意が必要となるかもしれません。
・ 視覚的な錯覚: 歪んだ視界や、物が二重に見えるなどの錯覚を経験する可能性があります。そのため、読書が難しくなることがあります。
・ 姿勢やバランスの問題: 視覚情報を正しく処理できないため、姿勢やバランスを維持することが難しくなる場合があります。そのため、ビジョントレーニングや感覚統合などの訓練が必要となることがあります。
・ 学習やコミュニケーションの困難: 視覚的な情報に頼ることが多い学習やコミュニケーションにおいて、視覚過敏が障害となる場合があります。そのため、学校で前の席にしてもらうなどの配慮が必要になるかもしれません。
視覚過敏は、日常生活に様々な支障をきたす可能性があります。
もし、視覚過敏が疑われる場合は医師や専門家に相談し、まぶしい光を遮る専用の眼鏡やリーディングスリットなどの道具の使用、刺激を減らすような環境の配慮など、子どもに合わせた支援をしていくとよいでしょう。
触覚過敏がもたらす問題
触覚過敏は、日常生活に様々な問題をもたらす可能性があります。例えば、次のようなものがあります。
・衣服の着心地の悪さ:タグや縫い目、特定の生地が不快に感じ、衣服を着るのを嫌がる。
・人との接触を避ける: 握手などの軽い接触でも不快に感じ、人と距離を置きたがる。
・物を触るのが難しい: 特定の質感の物に触れられないため、食事や遊び、日常生活動作が困難になる。
・不注意や怪我: 触覚情報をうまく処理できないため、転倒や怪我のリスクが高まる。
・不安やストレス: 触覚刺激に対する過剰な反応が、不安やストレスにつながる。
・社会生活への影響: 触覚過敏が原因で、学校などで、友人関係に支障をきたす可能性がある。
触覚過敏は、日常生活に様々な問題をもたらす可能性があるため、適切な対処法や治療法が必要となります。
小さい子どもは特に、触覚刺激が脳の発達につながるため、発達に影響があることもあります。
触覚過敏の子どもは、様々な感触に触れる経験が少なくなるため、少しずつ段階を踏んで感触に慣れる、苦手な感触のものに触ったあと、すぐに手を拭けるようにしておくなど、子どもに合わせた対応をしていきましょう。
味覚過敏がもたらす問題
味覚過敏は、特定の味や食感に対して過剰に敏感になるため、日常生活に様々な問題を引き起こす可能性があります。
以下に、味覚過敏がもたらす問題の例を挙げていきます。
・偏食: 特定の味が受け付けないため、食べられる食品の種類が限られてしまい、偏食につながることがあります。偏食は栄養バランスの悪化を招き、健康上の問題を引き起こす可能性があります。
・食事時間のストレス: 食事の時間がストレスとなり、食事を楽しむことが難しくなることがあります。また、食事中に気分が悪くなったり、嘔吐してしまうなど、身体的な症状が現れる場合もあります。
・社会生活への影響: 外食や友人との食事に参加することが難しくなり、社会生活が制限される可能性があります。
・精神的な負担: 味覚過敏は、自分でコントロールできない症状であるため、大きな精神的負担となることがあります。
味覚過敏は周りの人にはわかりにくいため、子どもの味覚過敏が疑われたときは、日常生活に支障をきたしている場合は、専門医に相談しましょう。少量の薄味から少しずつ味に慣れるようにする、食べやすい食感のもので栄養をとるなど、食事の工夫をしていくとよいでしょう。
感覚過敏と感覚鈍麻の違い
感覚過敏とは、特定の感覚情報に対して過剰に反応してしまう状態のことです。
一方、感覚鈍麻とは、感覚情報に対して鈍感になってしまう状態のことです。
どちらも、日常生活に支障をきたす可能性があります。
感覚過敏と感覚鈍麻は、一見すると正反対の状態のように思えますが、実は密接に関連しています。
感覚過敏の人は、特定の感覚に過剰に反応してしまう一方で、他の感覚には鈍感になっている場合もあります。
逆に、感覚鈍麻の人は、特定の感覚に鈍感になっている一方で、他の感覚には過敏になっている場合もあります。
感覚過敏と感覚鈍麻の原因は、まだ完全には解明されていませんが、脳の機能障害が関係していると考えられています。また、ストレスや疲労なども、感覚過敏や感覚鈍麻を悪化させる可能性があります。
感覚過敏や感覚鈍麻への対処法は、原因や症状によって異なります。
感覚過敏の場合は、刺激を避ける、感覚刺激を軽減する工夫をしますが、感覚鈍麻の場合は、感覚刺激を増やす、感覚刺激を強化する工夫をすることなどをしていきます。
まとめ
感覚過敏とは、人よりも敏感に刺激を受け、日常生活に支障をきたす症状のことです。様々な原因が考えられますが、脳機能や身体的な疾患、ストレスなどが影響していると言われています。
感覚過敏は、嗅覚、聴覚、視覚、触覚、味覚の5つの感覚のいずれかに対して起こります。それぞれの感覚に過敏な場合の特徴や対処法は異なります。
感覚過敏は、子どもの場合、発達障害の一種である自閉スペクトラム症(ASD)や注意欠如・多動性障害(ADHD)との関連性が指摘されています。
子どもの感覚過敏は、対処法や治療法により、改善されたり、不快感を減らすこともできます。
感覚過敏による子どもの負担が軽減されるように、適切な対応や対処を行うとともに、周囲の理解と協力を得られるようにしていきましょう。