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軽度知的障害とは?特徴や診断基準、対応について

2025.02.12
  • 知的障害
  • 発達障害の療法
  • 障害診断について
  • 支援方法・家庭での過ごし方

軽度知的障害とは「知的機能の成長や発達に課題があり、学習や日常生活に影響を及ぼす知的障害の中でも、その程度が軽いもの」を指します。

学習やコミュニケーションに多少の困難さがあるものの、適切な支援があれば社会生活を送ることができます。

このコラムでは軽度知的障害の理解や支援に役立てるために、軽度知的障害の特徴や診断基準、対応方法などについて解説します。

軽度知的障害とは


知的障害とは平均よりも著しく知的な能力が低い状態です。

その中で、軽度知的障害は「知的機能の成長や発達に課題があり、学習や日常生活に影響を及ぼす知的障害の中でも、その程度が軽いもの」とされています。
割合は高く、知的障害全体の約85%を占めます。

知的障害の定義

知的障害の特徴は「一般的な知的能力が著しく低下している状態を指し、社会生活に著しい制約を受ける」ことです。
厚生労働省の知的障害児(者)基礎調査には「知的機能の障害が発達期(おおむね18歳まで)にあらわれ、日常生活に支障が生じているため、何らかの特別の援助を必要とする状態にあるもの」とあります。

医学的には「精神遅滞」を指し、知能検査によって確かめられる知的機能の欠陥と適応機能の明らかな欠陥が「発達期(おおむね18歳まで)に生じる」と定義されます。

知的障害の程度の判定

「知的障害の程度」の判定は専門家によって行われ、適切な支援や療育を提供するための重要なステップです。
判定はいくつかの段階に分けて行われます。

まず知能検査や発達検査を行い、様々な認知能力から知的レベルを測定します。
その後、生活能力(日常生活の自立度や社会生活への参加度など)や社会適応度(対人関係やコミュニケーション、社会規範への理解度など)を総合的に判断し、「知的障害の程度」を診断します。

年齢に応じた標準的な知能検査結果を数値化した「知能指数 (IQ)」により、軽度・中等度・高度・最重度に分類されます。一般的に70以下が知的障害とされます。

• 軽度知的障害: 50~70
• 中等度知的障害: 35~50
• 重度知的障害: 20~35
• 最重度知的障害: 20未満

中等度から最重度の知的障害は社会生活や日常生活に制限が生じることが多く、支援が必要となります。
それに対し、軽度の知的障害は最も多く見られるタイプで、日常生活で困難が生じることはありますが、適切な支援があれば社会生活を送れます。

「知的障害の程度」はあくまでも目安であり、個人差があります。
また、知的障害は単一の障害ではなく、他の障害や発達上の課題を伴う場合もあります。

知的障害の原因

知的障害は様々な原因によって発症します。
先天性の要因には遺伝的要因や染色体異常、妊娠中や出産時の問題、病気などがあります。一方、後天的な要因には脳の損傷や感染症、てんかんなどの疾患によるものなど、多岐にわたります。

軽度知的障害と発達障害の違い

発達の遅れや困難を伴う軽度知的障害は「発達障害」とよく混同されますが、両者には違いがあります。

軽度知的障害はIQが50~70程度の「知的な能力の発達が遅れている」状態で、自立した日常生活には適切な支援が必要です。

一方、発達障害は主にコミュニケーション、社会性、運動、学習などの分野で困難を経験する状態です。IQは正常範囲であることが多く、日常生活に大きな支障はない場合もあります。

ただし、両者は重複することもあります。
ある研究によると、軽度知的障害者の40~60%に発達障害が併存し、逆に発達障害者の10~30%に軽度知的障害が併存します。
各特徴を理解し、適切な支援を行うことが大切です。

軽度知的障害と学習障害の違い

学習に困難さを抱える人が経験する「学習障害(LD)」も、やはり軽度知的障害と混同されますが、原因や特徴が異なります。

軽度知的障害は「知的機能の全般的な発達の遅れ」とみなされ、学習のみならず、社会生活やコミュニケーションにも困難さを抱えることがあります。
知的能力そのものが低く、学習だけでなく生活全般にわたって支援が必要になります。
言語やコミュニケーション、社会的なルールを理解したり、計画を立てる能力にも遅れが生じます。

一方、LDは「特定の認知機能に問題があることで、聞く、話す、読む、書く、計算するなどの能力に困難を伴う障害」とされます。
具体的には読み書きや計算の困難さを中心に、視覚的記憶や空間認知などの特定の認知機能に問題が生じます。
反面、知的能力そのものは軽度知的障害よりも高いため、適切な支援があれば学習や社会生活に大きな支障なく生活できます。

このように、LDと軽度知的障害は互いに異なる特性があり、適切な支援の提供にはそれぞれの特性理解が必要です。

軽度知的障害の特徴

軽度知的障害は早期に適切な支援を受けることで、社会生活への適応を図れます。
支援には療育や特別支援教育など様々な方法がありますが、さまざまな時期ごとの特徴を知ることが大切です。
時期に応じて、観察される特徴は異なります。

幼児期の特徴

幼児期の軽度知的障害の特徴は、言葉の発達が遅れたり、動作がぎこちなかったりすることです。以下の特徴が見られます。

• 言語能力の遅い発達
• 発語が遅く、単語や文法が不十分
• 指示が理解しづらい
• 話の内容が分かりにくい
• 認知能力
• 記憶力が弱い
• 学習速度が遅い
• 問題解決能力が低い
• 抽象的な概念を理解しづらい
• 社会性
• 友達と遊ぶのが苦手
• ルールに従うのが難しい
• 気持ちをうまく伝えられない

就学期の特徴

就学期になると学習の遅れや社会性の未熟さが目立つようになります。
また、身体的発達の遅れより、言語能力や認知能力の発達の遅れがより目立つ傾向があります。
軽度知的障害の特徴がより顕著に現れ、以下のものが挙げられます。

学習の遅れ

学業面で、特に国語や算数などの基礎的な科目で遅れがみられます。理解力や記憶力が弱く、学習内容を習得するのに時間がかかります。

言語能力の遅れ

語彙が少なく、文法も複雑な文章を理解したり、表現したりすることが苦手です。コミュニケーションでも自分の考えを明確に伝えたり、相手の話の内容を正確に理解したりすることが難しい場合があります。

社会性の遅れ

対人関係や社会規範を理解することが難しく、適切な行動がとれない場合があります。集団行動・ルールを守ることや、友達とのトラブル解決などに苦労することがあります。

運動能力の遅れ

細かい動作や複雑な動作を習得するのに時間がかかり、運動能力が低い傾向にあります。ボール遊びや体育の授業などで苦手意識を持つ場合があります。

学校生活や友人関係において困難を感じることが増えるため、早期に支援を受けましょう。また、学校や地域の支援機関と連携し、個々のニーズに合わせた支援を受けることが大切です。

軽度知的障害のボーダーライン

軽度知的障害のボーダーラインとは「知的障害と発達障害の境界に位置する」状態を指します。
IQはボーダーライン(70~85)を示し、知的障害と判断されるほどではないものの、学習や生活に困難さを抱えることがあります。

特徴としては、理解力・記憶力・問題解決能力が少し遅れている、学習に遅れが見られる、社会的なコミュニケーションが苦手、精神的な未熟さが見られるなどです。
これらの特徴は知的障害・発達障害のいずれにも当てはまる場合があり、判断が難しいケースもあるため、専門家による適切な診断と評価が必要です。

治療の可能性

知的障害は「治る」ものではなく、生涯にわたって支援が必要となるケースがほとんどです。
軽度知的障害の場合は早期発見により適切な支援があれば、社会に適応可能です。
社会生活に必要なスキルを身につけ、周囲のサポートを受けながら自立した生活を送れます。

軽度知的障害の診断を受けた場合は焦らず、専門家や周囲の人々のサポートを受けながら本人のペースで成長することが大切です。
また、社会全体で軽度知的障害に対する理解を深め、適切な支援体制を整えていくことが社会で活躍できる環境づくりにつながります。

軽度知的障害のお子さんへの対応


軽度知的障害のお子さんへの対応には一人ひとりに合わせた個別的なアプローチが有効で、様々な方法があります。
たとえば、視覚的な教材やわかりやすい言葉を使った説明、反復練習、スモールステップによる学習、タブレットやパソコンなどITツール、学習ゲームやコミュニケーションツールを利用することで、楽しく学習を進められます。

指導の際には個々の特性に合わせた対応が必要となります。
例えば、集中力が続かないお子さんには短時間指導を行うなど、臨機応変な対応が求められます。

また、一度に多くの情報を処理することが難しいため、小さなステップを意識したアプローチが大切です。
複雑な課題を小さなステップに分け、段階的に理解させることは学習効果を高めます。
小さな目標を設定し達成感を味わうことで、自信とやる気も育めます。

・スモールステップの例:
 *課題を細かく分解して一つずつ達成できるようにする
 *作業工程をイラストや写真で示す
 *繰り返し練習することで理解を深める
 *成功体験を積み重ねることで自信をつける

まとめ

軽度知的障害のお子さんは幼い頃から周囲のお子さんたちと比べて学習や生活面で遅れがみられます。
配慮や支援が必要ですが、中程度~重度の知的障害と異なり、適切な支援があれば社会生活を送れます。

日常生活の支援としては身の回りのことを自分でできるようにし、時間管理やお金の管理など、生活自立に必要なスキルを身につけさせる必要があります。必要に応じて福祉サービスを利用することで、より充実した生活を送れます。

学習面では抽象的な概念を理解するのが難しいため、授業ではより分かりやすく、簡潔な説明と反復学習が大切です。教材や課題の簡略化や、個別指導、支援学級の活用で各々の理解度に合わせて学習を進められます。

社会生活ではコミュニケーションや対人関係の構築に苦労します。友達との適切なコミュニケーションの取り方や社会生活に必要なマナーを教え、適切な遊びの機会や友達関係の構築をサポートすることで社会性を育めます。

発達段階や個性に合わせた適切な配慮と支援と同時に、保護者や関係機関との連携が不可欠です。本人の理解度に合わせて学習を進め、社会生活に必要なスキルを身につけさせることで自立した生活を送れるよう支援しましょう。

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