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軽度知的障害とは?特徴や診断基準、対応について

2024.08.30
  • 知的障害
  • 発達障害の療法
  • 障害診断について
  • 支援方法・家庭での過ごし方

軽度知的障害とは、知的機能の成長や発達に課題があり、学習や日常生活に影響を及ぼす知的障害の中でも、その程度が軽いものをいいます。
軽度知的障害の人は、学習やコミュニケーションに多少の困難さがあるものの、適切な支援があれば、社会生活を送ることができます。
この記事では、軽度知的障害の特徴や診断基準、対応方法などについて解説し、軽度知的障害の人の理解や支援に役立てていただけたらと思います。

軽度知的障害とその原因

知的障害とは、一般的な知的能力が著しく低下している状態を指し、社会生活に著しい制約を受けることが特徴です。
その中でも、軽度知的障害の人の割合は多く、知的障害全体の中で約85%を占めるともいわれています。
軽度知的障害の場合、知能指数(IQ)は50~70程度とされています。日常生活を送る上で、困難が生じることはありますが、適切な支援があれば、社会生活を送ることができます。
軽度知的障害は、先天性の要因や後天的な要因など、様々な原因によって発症します。先天性の要因としては、遺伝的要因や染色体異常などが挙げられ、後天的な要因としては、脳の損傷や感染症やてんかんなどの疾患によるものなど多岐にわたります。

知的障害の定義とは?

知的障害とは、平均よりも著しく知的な能力が低い状態を指すことを言いますが、では、具体的にどのように定められているのでしょうか。

厚生労働省の知的障害児(者)基礎調査:調査の結果によると、
「知的機能の障害が発達期(おおむね18歳まで)にあらわれ、日常生活に支障が生じているため、何らかの特別の援助を必要とする状態にあるもの」という記述があります。

また、医学的には、精神遅滞と同じものを指し、「 知能検査によって確かめられる知的機能の欠陥」と「 適応機能の明らかな欠陥」が「 発達期(おおむね18歳まで)に生じる」と定義されています。
 

知的障害の程度を判定する方法

知的障害の程度は、いくつかの段階に分けて行われます。
まずは、知能検査や発達検査を行い、知的レベルを測定します。
その後、生活能力の評価や社会適応度などを総合的に判断して、知的障害の程度を診断します。
知能検査や発達検査は、様々な認知能力を測定する検査です。 生活能力の評価は、日常生活の自立度や社会生活への参加度などを評価するものです。 社会適応度の評価は、対人関係やコミュニケーション、社会規範への理解度などを評価するものです。

知的障害の程度は、以下の4つに分類されます。
1. 軽度
2. 中等度
3. 高度
4. 最重度

軽度知的障害は、最も多く見られるタイプであり、社会生活への参加や自立生活が比較的可能であることが多いです。 中等度から最重度の知的障害は、社会生活や日常生活に制限が生じることが多く、支援が必要となります。
知的障害の程度は、あくまでも目安であり、個人によって差があることも多いです。 また、知的障害は単一の障害ではなく、他の障害や発達上の課題を伴う場合もあります。
知的障害の程度を判定することは、適切な支援や療育を提供するための重要なステップです。 知的障害の判定は、専門家によって行われます。

知的障害の種類と分類

知的障害には、その程度や特徴によって、さまざまな種類と分類があります。
知的障害の程度は、知能指数(IQ)によって分類されます。
IQは、年齢に応じた標準的な知能検査の結果を数値化したもので、一般的に70以下が知的障害とされ、IQの程度によって以下のように分類されます。

• 軽度知的障害: IQ 50~70
• 中等度知的障害: IQ 35~50
• 重度知的障害: IQ 20~35
• 最重度知的障害: IQ 20未満

また、知的障害の特徴によって、以下の例のように分類されることもあります。


• ダウン症: 21番目の染色体が3本存在することで起こる遺伝子異常による知的障害
• 自閉症スペクトラム障害: 社会性やコミュニケーションに困難を伴う発達障害
• 言語障害: 言語の発達に遅れがある
• 学習障害: 読み書きや計算などの学習に困難を伴う

知的障害の原因は、遺伝的なものや、妊娠中や出産時の問題、病気など、さまざまな要因があります。知的障害は、治すことができませんが、軽度知的障害の場合、早期発見により、適切な支援があれば、社会に適応することも可能です。

軽度知的障害と発達障害に関係はあるのか?

軽度知的障害と発達障害は、どちらも発達の遅れや困難を伴うため、混同されがちです。しかし、両者には明確な違いが存在します。
軽度知的障害は、知的な能力の発達が遅れている状態のことです。IQが50~70程度、日常生活に支障はあるものの、適切な支援があれば自立した生活が可能です。
発達障害は、主にコミュニケーション、社会性、運動、学習などの分野で困難を経験する状態のことです。IQは正常範囲であることが多く、日常生活に大きな支障はない場合もあります。
軽度知的障害と発達障害は、重複して存在することがあります。研究によると、軽度知的障害を持つ人の40~60%に発達障害が併存していると言われています。また、発達障害を持つ人の10~30%に軽度知的障害が併存しているとも言われています。
両者は重複することもありますが、それぞれの特徴を理解し、適切な支援を行うことが重要です。

LDと軽度知的障害の違いは何か?

LD(学習障害)と軽度知的障害は、どちらも学習に困難さを抱える人が経験する障害ですが、その原因や特徴は異なります。
まず、LDは「特定の認知機能に問題があることで、聞く、話す、読む、書く、計算するなどの能力に困難を伴う障害」とされています。一方、軽度知的障害は「知的機能の全般的な発達の遅れ」であり、学習だけでなく、社会生活やコミュニケーションにも困難さを抱えることがあります。
具体的には、LDは読み書きや計算の困難さを中心に、視覚的記憶や空間認知などの特定の認知機能に問題が生じます。しかし、知的能力そのものは軽度知的障害よりも高く、適切な支援があれば、学習や社会生活に大きな支障なく生活することができます。
一方、軽度知的障害は、知的能力そのものが低いため、学習だけでなく、生活全般にわたって支援が必要になることが多くあります。言語やコミュニケーション、社会的なルールを理解したり、計画を立てたりする能力にも遅れが生じることがあります。
LDと軽度知的障害は、それぞれ異なる特性を持った障害です。そのため、適切な支援を提供するためには、それぞれの特性を理解することが重要になります。

軽度知的障害の特徴とは?

幼児期に見られる軽度知的障害の特徴は、言葉の発達が遅れたり、動作がぎこちなかったりすることが挙げられます。就学期になると、学習の遅れや社会性の未熟さが目立つようになります。
軽度知的障害は、早期に適切な支援を受けることで、社会生活への適応を図ることができます。支援内容には、療育や特別支援教育など、様々な支援方法があります。

幼児期に見られる軽度知的障害の特徴

軽度知的障害は、乳幼児期から成人期までさまざまな段階で特徴が現れます。幼児期では、身体的発達の遅れよりも、言語能力や認知能力の発達の遅れがより目立つ傾向があります。

幼児期に見られる特徴は、
• 言語能力
• 発語が遅く、単語や文法が不十分
• 指示が理解しづらい
• 話の内容が分かりにくい
• 認知能力
• 記憶力が弱い
• 学習速度が遅い
• 問題解決能力が低い
• 抽象的な概念を理解しづらい
• 社会性
• 友達と遊ぶのが苦手
• ルールに従うのが難しい
• 気持ちをうまく伝えられない
などがあります。

これらの特徴は、個人差が大きく、すべての幼児に当てはまるとは限りません。気になることがあれば、医師や専門家に相談をするとよいでしょう。

就学期に見られる軽度知的障害の特徴

就学期になると、軽度知的障害の特徴がより顕著に現れます。主な特徴としては、以下のものが挙げられます。

• 学習の遅れ: 学業面で、特に国語や算数などの基礎的な科目で遅れがみられます。理解力や記憶力が弱く、学習内容を習得するのに時間がかかります。
• 言語能力の遅れ: 語彙が少なく、文法も複雑な文章を理解したり、表現したりすることが苦手です。また、コミュニケーションにおいても、自分の考えを明確に伝えたり、相手の話の内容を正確に理解したりすることが難しい場合があります。
• 社会性の遅れ: 対人関係や社会規範を理解することが難しく、適切な行動がとれない場合があります。集団行動やルールを守ること、友達とのトラブルを解決することなどに苦労することがあります。
• 運動能力の遅れ: 細かい動作や複雑な動作を習得するのに時間がかかり、運動能力が低い傾向にあります。ボール遊びや体育の授業などで苦手意識を持つ場合があります。

これらはあくまでも一般的な特徴であり、個人差があります。これらの特徴がすべて当てはまらない場合や、他の特徴が強く出る場合もあります。また、軽度知的障害と診断されていても、適切な支援があれば、社会生活を送る上で大きな支障なく生活を送ることができます。
就学後は、学校生活や友人関係において困難を感じることが多くなるので、早期に支援を受けることが重要です。また、学校や地域の支援機関と連携し、個々のニーズに合わせた支援を受けることが大切です。

軽度知的障害のボーダーラインとは何か?

軽度知的障害のボーダーラインとは、知的障害と発達障害の境界に位置するような状態を指します。IQ検査の結果がボーダーライン(70~85)を示す場合もあり、知的障害と判断されるほどではないものの、学習や生活に困難さを抱えることがあります。
軽度知的障害のボーダーラインの特徴は、理解力や記憶力、問題解決能力が少し遅れている、学習に遅れが見られる、社会的なコミュニケーションが苦手、精神的な未熟さが見られるなどです。これらの特徴は、知的障害と発達障害のどちらにも当てはまる場合があり、判断が難しいケースもあるので、専門家による適切な診断と評価が必要です。
軽度知的障害のボーダーラインへの対応は、個人差が大きく、一概に決めることはできません。しかし、一般的に以下のことが重要です。
• 個人の特性や強み、弱みに合わせた支援
• 適切な教育や訓練
• 社会生活へのサポート
• 家族や周囲の理解と協力
軽度知的障害のボーダーラインは、治るものではありません。しかし、適切な支援があれば、社会生活を送る上で大きな困難を克服することが可能です。

軽度知的障害は治るのか?

軽度知的障害とは、IQが50~70の範囲にあり、日常生活に支障はあるものの、適切な支援があれば社会参加や自立生活が可能な知的障害です。このため、軽度知的障害は「治る」ものではなく、生涯にわたって支援が必要となるケースがほとんどです。
しかし、早期発見・早期支援によって、社会生活に必要なスキルを身につけることで、周囲のサポートを受けながら自立した生活を送ることができるようになります。
軽度知的障害と診断された場合、焦らず、専門家や周囲の人々のサポートを受けながら、本人のペースで成長していくことが大切です。
軽度知的障害は、一人一人によって症状や特性が異なります。そのため、軽度知的障害への対応は、以下のことを心がけましょう。

• 早期発見・早期支援
• 個々の特性やニーズに合わせた支援
• 社会全体で理解を深める
• 適切な支援体制を整える

社会全体で、軽度知的障害に対する理解を深め、適切な支援体制を整えていくことが、軽度知的障害のある人が社会で活躍できる環境づくりにつながります。

軽度知的障害の子どもへの対応は?

軽度知的障害の子どもへの対応は、一人一人に合わせた個別的なアプローチが重要で、様々な方法があります。
例えば、視覚的な教材やわかりやすい言葉を使った説明、繰り返し練習、スモールステップによる学習などがあります。また、タブレットやパソコンなどITツールを使って、学習ゲームやコミュニケーションツールを利用することで、楽しく学習を進めることもできます。
これらの方法を組み合わせることで、子どもたちの成長を促すことができます。
次に、そのポイントをいくつか紹介します。

・スモールステップを意識したアプローチ: 軽度知的障害の子どもは、一度に多くの情報を処理することが難しい場合があります。そのため、指導を行う際には、小さなステップを意識したアプローチが大切です。複雑な課題を小さなステップに分け、段階的に理解させることで、学習効果を高めることができます。また、小さな目標を設定し、達成感を味わうことで、自信とやる気を育むことができます。

・スモールステップの例:
 *課題を細かく分解して、一つずつ達成できるようにする。
 *作業工程をイラストや写真で示す。
 *繰り返し練習することで、理解を深める。
 *成功体験を積み重ねることで、自信をつける。

・個々の特性に合わせた対応: 軽度知的障害の子どもは、一人ひとり特性が異なります。そのため、指導を行う際には、個々の特性に合わせた対応が必要となります。例えば、集中力が続かない子どもには、短時間での指導を行うなど、臨機応変な対応が求められます。

・保護者や関係機関との連携: 軽度知的障害の子どもの支援には、保護者や関係機関との連携が不可欠です。保護者や関係機関と情報共有を図り、連携して支援を行うことで、より効果的な指導が可能になります。

軽度知的障害の子どもに必要な配慮とは?

幼い頃から周囲の子どもたちと比べて学習や生活面で遅れがみられ、軽度知的障害と診断された子どもたちは、周囲の子どもたちとは異なる配慮や支援が必要となります。
軽度知的障害のある子どもたちは、同じ年齢の他の子どもたちと比べて、学習のペースが遅く、抽象的な概念を理解するのが難しいことがあります。そのため、授業ではより分かりやすく、簡潔な説明が必要となり、繰り返しや復習を十分に行うことが大切です。また、教材や課題を簡略化したり、個別指導や支援学級を活用することで、一人ひとりの理解度に合わせて学習を進めることができます。

社会生活においても、コミュニケーションや対人関係の構築に苦労することがあります。そのため、友達との適切なコミュニケーションの取り方や社会生活に必要なマナーを教えることが重要です。また、適切な遊びの機会や友達関係の構築をサポートすることで、社会性を育むことができます。

日常生活においても、身の回りのことが自分でできるようになるための支援が必要です。時間管理やお金の管理など、生活自立に必要なスキルを身につけることで、自立した生活を送ることができるようになります。また、必要に応じて福祉サービスを利用することで、より充実した生活を送ることができます。

軽度知的障害のある子どもたちは、発達段階や個性に合わせて、適切な配慮と支援を行うことが大切です。発達段階に合わせて、一人ひとりの理解度に合わせて学習を進め、社会生活に必要なスキルを身につけることで、自立した生活を送ることができるようになります。

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