ソーシャルスキルトレーニング(SST) の技法と最も効果的な対象者について解説します
- 発達障害の療法
ソーシャルスキルトレーニング(SST)とは?
社会生活や対人関係を円滑に送るために必要なスキルを身につけるためのトレーニングです。困り場面を想定し、ロールプレイ等で解決方法を見つけていくような方法もあります。
こんな問題を抱えている人に効果がある
ソーシャルスキルトレーニング(SST)は社会生活において必要なルールを学ぶことや人間関係を築くためのスキルを学びづらい人が対象になります。たとえば、以下のような人は対象となるでしょう。
・周りの様子を察する(空気を読む)ことが難しい
・得意と不得意なことに大きく偏りがある
・感情や行動のコントロールが苦手
・不安が強い
・経験不足になりやすい
発達障害や知的障害のある子どもや、心理的な要因で社会生活に不安が大きい人なども対象となります。中でも対人スキルや感情のコントロールについては、テーマとして取り上げられることも多いでしょう。
ソーシャルスキルトレーニング(SST)の技法
ソーシャルスキルは、実施する人が「対象となる人に何を達成してほしいのか」という目標を意識することで、多様なことがらが題材になります。できたことはしっかりと褒め、できなかったときも具体的にどうしたら良いのかを伝えることを教えます。
子どもについては、課題に応じて以下のようなポイントを組み合わせていきます。
集団の大きさを変えて学ぶ
ソーシャルスキルは、マンツーマンで個別で行うだけではなく、数人の集団で学ぶなど、さまざまな形式がとられます。たとえば、個別であれば、本人が特に困っている部分を深めていくことができます。また、集団では一緒に参加する子ども同士がモデルになったり、自分とは異なる意見を聞く機会にもなるでしょう。
教材やロールプレイを使って学ぶ
新しいものごとを学ぶときに、学びやすい方法はそれぞれ異なります。ソーシャルスキルの内容を伝えるときには、それぞれの子どもが理解しやすいように工夫をします。
机上で知識を学ぶ際には、ワークシートや絵カードなどの教材を用いて学ぶ方法があります。また、出来事が、短いお話として書かれているソーシャルストーリーを用いることもあります。
こういった教材で学んだことを、劇のように身体を動かして演じて、より実感を持たせる方法(ロールプレイ)もあります。それぞれに応じた手立てを用いることで、学んでほしい内容を確実に理解できるようにしていきます。
遊びや共同作業の中でも学ぶ
ゲームや工作、調理など、誰かと共同で活動をしながら、決まったルールを確認したり、相談や役割分担について学んだりします。勝ち負けがあるゲームでは、負けたという結果を受け止め、感情をコントロールするという目的でも行うことができます。
外出した先で学ぶ
飲食店でのマナーや公共交通機関でのマナーなどは、教材やロールプレイで学んだ後に、実際に体験して実践することで、さらに学びを深めることになります。
ソーシャルスキルを本人に合った方法で学び、不安が少ない状況で成功経験を積むことは自信にも繋がります。また、たとえば「絵になっているとわかりやすい」「体験してみると理解しやすい」など自己理解に繋がっていくことも期待されます。
ソーシャルスキルトレーニング用のワークシート
ソーシャルスキルトレーニング用のワークシートは、個々のスキル向上をサポートする重要なツールです。例えば、自己紹介や感情表現、質問の仕方を学ぶための具体的な課題が含まれています。これにより、参加者は実際のコミュニケーションに必要なスキルを体験的に学ぶことができます。
各ワークシートは、視覚的要素や具体的なシナリオを通じて、学習者がより理解しやすく、自信を持って対人関係を構築できるよう工夫されています。また、ワークシートを通じて、自分の気持ちや他者の気持ちを理解する力を養うことができます。このプロセスは、発達障害を持つ方々において特に有効とされています。
小学生向けソーシャルトレーニング用のゲームの紹介
小学生のソーシャルスキルトレーニング(SST)には、ゲーム感覚で楽しみながらコミュニケーション能力を育む方法が効果的です。以下に、教室で手軽に実施できるSSTのアイデアをいくつかご紹介します。
1. どんじゃんけん
二つのチームに分かれ、各チームから一人ずつスタートします。相手チームのメンバーと出会ったらじゃんけんを行い、勝った方が先に進みます。負けた方はスタート地点に戻り、次のメンバーが出発します。相手の陣地に先に到達したチームが勝利となります。
2. 作戦ゴリラ
このゲームでは、子供たちがゴリラのキャラクターになりきり、特定の課題やミッションを協力して解決します。例えば、「みんなで協力してバナナを集めよう」といった目標を設定し、コミュニケーションや協力の大切さを学びます。
3. 手話を使ってあいさつしよう
手話を使って「おはよう」や「ありがとう」といった簡単なあいさつを練習します。視覚的なコミュニケーションを通じて、相手への思いやりや表現力を養います。
4. 箱の中身はな〜んだ?
一人が箱の中に入っている物を見ずに触り、その感触を頼りに何が入っているかを当てるゲームです。周囲の子供たちはヒントを出し合い、答えを導きます。これにより、質問力や推測力、協力する姿勢を育てます。
5. 隠してるものな〜んだ?
一人が物を隠し、他の子供たちがそれが何かを質問しながら当てるゲームです。質問と回答を通じて、コミュニケーション能力や論理的思考を鍛えます。
これらのゲームを通じて、子供たちは楽しみながらソーシャルスキルを身につけることができます。特に低学年のうちに、これらの活動を取り入れることで、コミュニケーション力や協調性を効果的に育むことが期待できます。
中学生向けソーシャルトレーニング用のゲームの紹介
中学生のソーシャルスキルトレーニング(SST)には、ゲームを活用して、楽しみながらコミュニケーション能力や問題解決力を育むことができるものがあります。以下に、中学生向けのSSTに適したゲームをいくつかご紹介します。
1. フレンドシップアドベンチャー
このボードゲームは、小学校高学年から中学生を対象です。授業中や休み時間、部活動などで直面する困りごとをテーマにしています。プレイヤーは冒険を進めながら、ストレスマネジメント、助けを求める、アサーション(自己主張)、対立解消といったソーシャルスキルを学びます。
2. サイコロジーゲーム 中学生セット
日本で初めて開発されたカウンセリング現場向けのボードゲームで、カードに書かれた質問に答えながらすごろくを進めるゲームです。カードに対して答えるので、「相手の質問に答えないといけない」という心理プレッシャーを感じることなく進めることができます。
3. おしゃべりバトルカードゲーム ペチャリブレ
幻冬舎が手掛けるトーク型カードゲームで、プレイヤーはキャラクターカードとアイテムカードを組み合わせ、自分のキャラクターの強さを即興でアピールします。即興で話す力や表現力を楽しみながら鍛えることができます。
発達障害のことも立ちが苦手なことが多い「場面に応じて臨機応変に話す」「即興で対応する」というスキルをゲームを楽しみながら伸ばすことができます。
勝負の判定は、周囲でトークバトルを聞いていた他のプレイヤーです。
4. 子どもが思わず動きだす! ソーシャルスキルモンスター
臨床心理学・特別支援教育の専門家が監修した書籍で、問題行動を「モンスター」と見立て、その対処法を子どもたちと一緒に考える内容です。ゲーム感覚で問題解決力や自己理解を深めることができます。
モンスターの例:
・注意されたときに怒りたくなるのは「おこりんご」のせい
・悲しい気持ちが制御できずタスクを進められないのは「かなC(かなしい)」のせい
・助けがほしいのに何もできないのは「モヤモヤン」のせい
5. イロトカタチ
色と形を組み合わせて遊ぶカードゲームで、コミュニケーションや協調性を育む効果があります。ルールを守りながら他者と協力することで、社会性の向上が期待できます。
これらのゲームを通じて、中学生は楽しみながらソーシャルスキルを身につけることができます。ゲーム形式のSSTは、直接的な指導よりも受け入れやすく、効果的な学習手段となるでしょう。
ソーシャルスキルトレーニングを受けられる施設
ソーシャルスキルトレーニング(SST)は、医療機関や児童療育施設、児童発達支援施設などで指導員やセラピストが個別や少人数集団で行うこともあるでしょう。また、幼稚園、保育園、学校などでは、保育士や教員が指導を行っていきます。また、家庭生活で行える内容もあります。
名古屋でソーシャルスキルトレーニング
名古屋市内でソーシャルスキルトレーニング(SST)を提供している施設をいくつかご紹介します。
ニコニコこどもクリニック
0歳から15歳までを対象に、カウンセリングやSST、心理検査などを実施しています。
名古屋第二赤十字病院
0歳から15歳(中学3年生)までを対象に、カウンセリングやSST、心理検査などを提供しています。
他にも、ソーシャルスキルトレーニングを受けられる施設があります。
大阪でソーシャルスキルトレーニング
大阪市内でソーシャルスキルトレーニング(SST)を提供している施設をいくつかご紹介します。
大阪児童福祉センター
冠婚葬祭での必要な知識の学習やあいさつ、基本的な礼儀作法を実習で学べるソーショルスキルトレーニングプログラムを提供。ロールプレイやグループディスカッションを通して、自身を客観的に捉え直し、また社会で孤立してしまわないよう、お互い励ましあえる関係づくりを支援しています。
大阪市立子ども相談センター
子どもや保護者を対象に、発達支援やSSTを含む各種プログラムを提供しています。
大阪市立障がい者スポーツセンター
障がいのある方を対象に、スポーツを通じてソーシャルスキルの向上を目指すプログラムを提供しています。